幼馴染に彼女ができたけどなんで私が嫉妬されてるの?

「沙菜」

見逃してくれればいいのに、蓮は私の手を掴んで引き止めた。

「離して」

蓮に握られた部分から熱が伝わってくる。
嫌だよ…。

「いい加減、その態度やめろよ」

離して。
冷静でいられなくなる。

「蓮が悪いんじゃない!」

お願いだから離して!
腕を振り払うことに成功して、走って逃げた。

「待てって!」

何で追いかけてくるのよ!
肩を掴まれた。
その手で誰を触ってるの?

「嫌!」

そんな手で私を触らないでよ!

「なにがそんなに嫌なんだよ」

「あんな酷いことして、わからないの!?
蓮は誰でもいいんでしょ?だったら、わざわざ私にしなくてもいいじゃない!」

私は、誰でもいい中の一人になんてなりたくない。
誰かにとって特別な人になりたい。

「誰でもって、なんだよ…」

蓮がうろたえてる。
図星なんだ。
蓮に近づく女の子と私を同じだと思ってるんだね…。
酷く傷ついた。

「私は蓮の性欲解消に付き合う気ないから」

どうしてこんなに傷ついてるんだろう。
自分が大切にしてきた16年間を踏みにじられたからかな…。
ダメだ。もう涙が溢れる。
泣きたくなんかないのに。
俯いたら、いきなり蓮に掴まれ、そして引っ張られた。
わけもわからず翻弄されていると、壁に押し付けられた。
そして、乱暴に蓮の口がぶつかってきた。
こんなの嫌だ!

「んんー!!!」

力いっぱい抵抗しているのに、蓮はびくともしない。
私じゃなくてもいいくせに。
どうしてそんなことするの?
心の手が胸に伸びてきた。
ぐっと強く掴まれた。

「いやっ!!」

もう絶えられない。
叫んだら、蓮はようやく離れてくれた。
だけど、どうして?
どうしてそんな憎むような目を私に向けるの?

「なんだよ、自分だけ綺麗なポーズとってよ。
女だって充分性欲強いじゃねーかよ。
沙菜だって、どうせ彼氏ができたらやるんだろ。
今日だって、その格好、色気づいてるの丸出しじゃねーか」

吐き捨てるような蓮の言葉。

「…最低…」

私を、そんな風に見ていたなんて…。
走ってその場を逃げ出した。
もう、蓮は追いかけてこない。

涙は収まらない。
こんな風に泣きじゃくったのは子供のとき以来かもしれない。
なんとか落ち着かなくっちゃ…。

駅へ行けば人通りは当然増える。
だから私は逆方向へ歩いた。