幼馴染に彼女ができたけどなんで私が嫉妬されてるの?

「なによ、その目は」

「お母さん、お世辞よお世辞」

「沙菜もお世辞くらい言えるようになりなさい。人間関係タテマエは大切よ」

「大きなお世話」

「蓮君はすごくモテるでしょう?」

いきなり話題がオレに戻ってきた。

「そんなことないですよ」

適当にはぐらかす。
それにしても、コロッケ美味い。

「またまた。すっかり格好良くなっちゃったもの。彼女もいるんでしょ?」

「いませんよ」

「本当に?」

「オレより沙菜ですよ」

面倒だから、話題の矛先を沙菜に振った。

「今日デートだってマジか?」

気になるし。

「別に、蓮には関係ないでしょ」

「お母さんも気になる」

「僕も」

「なんで竜が気になるのよ」

苦笑する沙菜。

「え?だって僕沙菜と結婚したいから」

「「「え!?」」」

オレ、沙菜、沙菜の母ちゃんの声が見事にハモった。
そう言えば、竜は幼稚園の頃、良くそう言っていたな…。
だけど、幼児が言うのと、小学生が言うのとでは、少し重みが違う。

「ありがと、竜」

沙菜は一瞬驚いたものの、嬉しそうに竜の頭に手を伸ばした。

「あ、僕本気だからね。今時年下の夫は人気あるし、沙菜っちとは7つしか離れてないし」

「まぁ~、沙菜、今モテ期なんじゃない?」

「そうだよ、モテモテだな。デートの相手、教えろよ」

「別に、デートじゃないわよ」

沙菜はツンと顔を逸らした。
結局沙菜の相手はわからず仕舞いだった。
だけど、三波家のコロッケを皆で賑やかに食べて満足していた。
つっけんどんだったけど、沙菜と言葉を交わしたのも久しぶりだった。
それを嬉しいと感じた。

「兄ちゃん、俺本気だからね」

家に帰ると、竜はいきなりそうオレに言ってきた。
っつーか、今、竜は「俺」って言ったか?

「沙菜は俺が必ず手に入れるから」

それだけ言うと、竜は自分の部屋に入ってしまった。

な、なんだ?
もしかして、オレは今弟に宣戦布告されたのか?
竜はまだ9歳だぜ。
オレが9歳のときは、恋愛とか女の子のこととか興味ゼロで、ひたすら友達と遊びまわっていたぞ。
最近の小学生は恐ろしい。

だけど、発想がまだまだ子供だな。当然だけど。
沙菜が竜に優しいのは、男じゃねーからだ。
もし竜が沙菜に男として何かを求めたら、きっと拒絶されるんだ。
オレがされたように…。