幼馴染に彼女ができたけどなんで私が嫉妬されてるの?

「沙菜はそれが言いたかったワケ?」

「それって何よ」

「オレを送るのが嫌ってことなんだろ」

「そりゃ、重いから乗ってない方が断然楽に決まってんじゃない」

「だから、きちんと運賃払ってるじゃねーか」

「うん。それでいいって思ってたけど、蓮の彼女のこと考えたら、やっぱり止めるべきでしょ?」

「それは大丈夫だって言ってんだろーが」

「蓮は大丈夫でも、ありすちゃんは大丈夫じゃないかもしれないじゃない」

もうこの堂々巡り疲れたよ…。

「蓮は、一番にありすちゃんのこと考えないとダメでしょ?」

「うっせえな」

思えば、毎朝蓮と登校するから、周りにも色々言われるし、ありすちゃんからも異常に関わりを持たれてしまうんだ。
最初から、別々に行けば良かった。

「とにかく、明日から電車で行って。定期持ってるんだから」

それだけ伝わればもういいや。

「私帰るね」

ソファから立ち上がったんだけど、いきなり蓮が近づいてきたかと思ったら視界が遮られた。

「…っ!!」

なにこれ!
どういうこと!?

「嫌!!」

精一杯抵抗して何とか蓮から離れた。
今、蓮にキスされた…!?

「なにすんのよ!」

口を拭って睨みつけると、鋭い眼光で睨み返された。

「沙菜が悪いんだろ」

「はぁ!?意味わかんない!」

「おまえオレに雇われてんだから、詮索なんかしねーで仕事だけしてろよ」

冷たく言い放たれる。
いつもと違う蓮が恐くて言葉が出なくなった。

「がめつい沙菜ちゃんは、もしかしてお金払えばこの先やらせてくれたりするわけ?」

「何言ってるの…」

一歩一歩近づいてくる蓮。
恐い…。
私は走ってその場から逃げ出した。
混乱した頭で北河家を飛び出す。

「ただいまっ!」

「おかえりなさい。お風呂あいてるわよ」

リビングからお母さんが出てきた。

「後にする」

「そう?」

そのまま階段を駆け上って自分の部屋に入った。
そしてへたり込む。
さっきのって、キスだよね?絶対。
ありすちゃんがいるのになんで?
最悪!意味不明!ファーストキスだったのに!
なんてやつ!!
ありえない!!!
そういうことは、彼女にしなさいよ!

嫌がらせか?これはやっぱり史上最強の嫌がらせってこと?
しかも、その後なんて言った?
お金払えばやらせてくれる?とか言ってたよね。
怒りと悔しさで涙が出てきた。
どうしてこんなことになったのか、さっぱりわからないよ。
あまりのショックで、その日の夜はなかなか寝付けなかった。