「大丈夫?」

そう木田君に声をかけられて、はっと我に返った。

「疲れた?今日暑いし」

心配そうに私の顔を覗き込む木田君。

「ううん、大丈夫。お腹空いただけ」

慌てて笑顔を作った。
馬鹿は私か。
こんなに良い人に、さらに気を使わせたら可哀想だよね。

「そっか。良かった。今日混んでるよね。あの二人、まだあんなところだよ」

「ホントだ」

まだまだ昼食にありつくには時間がかかりそうだった。

「ねえ、木田君。この後別行動しない?」

「え?」

思いつきの提案だったけど、木田君はなぜか顔を赤くして固まった。
どうしたんだろう?

「北河君とありすちゃんは、もう二人の世界って感じだから、邪魔者は退散したほうがいいんじゃないかなって思うんだけど」

「あ、ああ…そっか、そうだよね」

「もし木田君が良ければ、だけど」

「もちろん」

「じゃ、決まりだね。食べ終わったら二人に言おうか」

「そうしよう」

良かった。木田君が了承してくれて。
これ以上蓮のデレデレ顔を見るのはうんざりだったから。
食べ終わってから別行動しようと二人に提案すると、蓮は超嬉しそうに、ありすちゃんは少し戸惑いながらも頷いた。

「その方が、木田君と沙菜ちゃんもいいよね」

なんて言いながら。
あ、そっか。
一応今回の会って、私と木田君を引き合わすってタテマエがあったんだっけ。
というわけで、午後からは木田君と二人行動になった。

「何か乗りたいのある?」

「とりあえず、ジェットコースターは全制覇でしょ」

「異議なし」

木田君は爽やかな笑顔で同意してくれた。

「フリーパスだもんね。とことん乗りまくろう~!」

だから、私も気持ちを切り替えてハイテンション。
楽しまなくちゃもったいない!
列に並んでいる間は、木田君とおしゃべりを楽しんだ。
木田君って会話も上手。
私が楽しめるように話題を選んでくれるし、私の話に興味を示してくれる。