木田君と別れた一番の原因は、今私の目の前にいるわけのわからないこの男。
蓮はどうやら、私が木田君をずっと、未だに好きだと思い込んでるみたい。
クリスマスイヴにうちに来たときに言っていた「きちんとした、優しくて善良な人」って、やっぱり木田君のことなんだ。
すっごく適切な表現。
別の日も、木田君と初詣に行くのかと聞いてきたし。

ここ最近の蓮は、前に自分が私にした仕打ちを忘れてるんじゃないかって思うくらい妙に気を使ってくるけど、なんなんだろう。
嫌われたことも辛かったけど、余所余所しく気を使われるのも、遠ざけられているようで寂しかった。

だから、教室で蓮が待ち構えているのを知って、心底驚いた。
急にどうしたんだろう。
まるで今までのことがなかったみたいに話しかけてきて。
しかも、木田君を責めるようなことを言って。

「大体、なんで蓮が許せないとか言うのよ。関係ないじゃない」

頭にきてそう言うと、蓮は無言で考え込んでしまった。

「木田君と何を話したの?」

「沙菜は振られたんじゃないのか?」

「私が質問してるんだけど」

「木田を好きなんだろ?」

「だから、なんでそうなるの?」

堂々巡りで疲れる…。

「好きじゃねぇのか?」

「優しくて、素敵な人だと思うよ」

「やっぱ好きなんだろ?」

「もう!どうでもいじゃない!なんでそればっかり聞くわけ?」

その質問はイヤなの!
自分の好きな相手に聞かれて嬉しい質問じゃないから!