「もっと女の子らしいと思ってたんだ。
だけど、元気すぎるというか、正直うるさいし、付き合ってて違うって思ったんだよな」

「なんだ、それ」

「もっと見た目通り、おしとやかだと思ったんだけどな」

「ふざけんな!」

「どうして北河が怒るんだよ」

ふたたびオレを睨む木田。
オレは動揺した。
オレの気持ちは、絶対誰にも知られたくない。

「幼馴染だからだよ」

「何を今更?」

「今更だぁ?」

負けじと睨み返すが、木田は動じない。

「幼馴染なら、慰めてあげたらいいんじゃないか?」

「そういう問題じゃねーだろ!」

「俺、しばらく北河とは喋りたくないから」

言い捨て、歩き出す木田。

「逃げるのかよ!」

当然追いかけた。

「木田、沙菜のこと考えろよ」

「北河にだけは言われたくない!!」

木田が叫んだ。
あまりの声の大きさに、遠くにいた生徒達が振り向く。

「おい…」

「部活なんだ」

木田は、もう話しかけても無駄とばかりの頑なな顔で、走っていった。
オレはもう、追いかけなかった。

今までとは全く違う別人のような木田。
一体、沙菜との間に何があったんだろう。
どんなに気になっても、確かめる術はなかった。

いや、確かめる方法は1つだけある…。
沙菜に聞けばいいんだ。

沙菜とは夏休み以来、数える程度しか会話していないし、すっかり嫌われている。
だけど、気になるんだ。
聞きたい。
また、そっけなく拒否されるんだろうか。
それでも、いい…。
オレは覚悟を決めた。