幼馴染に彼女ができたけどなんで私が嫉妬されてるの?

その時、沙菜がオレに気付いた。
優しい笑顔だった沙菜が、オレを見たとたんに厳しい表情になる。
そして、木田と繋がれていない方の手まで木田に縋るように触れた。
木田もオレに気付いて視線を向けた。
耐えられなくなって、オレは走って逃げ出した。

情けない…。
沙菜を諦めることもできず、かといって、拒絶されてもいいから気持ちを伝える勇気もなく。
いつまで経っても気持ちを切り替えられずに、ただ走って逃げることしかできないオレ。
沙菜がこんな情けない男を選ぶはずがない。

走れば2分で家に着く。
珍しく、日曜日なのに今日は母ちゃんが休みで、家に入ると「おかえりなさい」と言われた。
竜は母ちゃんにべったりだ。
オレは「ただいま」とぶっきら棒に言って、自分の部屋へ逃げ込んだ。
ふと、以前母ちゃんに言われた言葉を思い出した。

『蓮、もう高校生なんだから、いくら沙菜ちゃんでも夜お邪魔するの止めなさい』

『小学生と高校生は違うの』

本当だな…。
あのとき聞き流した言葉が今オレの胸を抉る。
母ちゃんはわかっていたのかもしれない。
オレが沙菜を好きになると。

沙菜に結婚を申し込んだ竜は、母ちゃんがいればそっちに夢中。
オレは、どんなにもがいても、結局沙菜に夢中なんだ。
ずっと。
きっと、生まれた時から。
今更存在を遠ざけようと思っても、無理に決まってるんだ。

じゃあ、どうすればいい?
この苦しい思いを抱えたまま、耐え続けるしかないっていうのか?