幼馴染に彼女ができたけどなんで私が嫉妬されてるの?

そんなわけのわからない悪あがきを一人でしては、どん底に落ちる毎日だった。
手に入れたいのに絶対にできない状況でもがき続けるのは苦しい。
だから、沙菜が幸せならそれでいいじゃないかと思うよう努めた。
オレだって、いつまでも呪縛のように沙菜に囚われていたくなどない。

生まれたときから、まるで家族のように一緒に育ってきた沙菜。
だけど、これからは別々の道を。
無理矢理前向きな考え方をした。

それでも、どうしてもオレは沙菜が好きで、次の瞬間は沙菜が欲しくて欲しくてたまらなくなる。
せめて、沙菜の家が隣じゃなければ良かったのに。
気にしないようにしても同じ学校で、そして家に帰れば隣の家に沙菜はいる。
見たくないのに目に入ってくる。
そして、会いたくないのにバッタリと会ってしまう。
今日のように。

期末テストも終わり、冬休みまであと数日という日曜日の夕暮れ時。
オレはバイトが終わり、店を出たところで今一番見たくないものを見てしまった。
沙菜と木田が寄り添う姿だ。

デートでもしていたんだろう。
沙菜は赤のダッフルコートを着ていた。
長い髪はサイド1つに束ねられ、白のマフラーが映えていて、知らない男も立ち止まって見てしまうほど可愛らしい姿だ。
その横に立つ木田。

二人は手を繋いでいて、どこから見ても爽やかで初々しい高校生カップルだった。
気付かれないうちにさっさと立ち去れば良いのに、オレは目が離せなかった。
あまりのショックで、足が竦んでいた。
木田は沙菜の彼氏で、駅まで送るなんて普通なのに、オレの領域を侵されたような気持ちになった。

これは嫉妬だ。
どんなに欲しても手に入らない、俺が一番大事だったものを手に入れた木田に、オレは嫉妬しているんだ。