幼馴染に彼女ができたけどなんで私が嫉妬されてるの?

「気が変わった。駅まで送ってやるよ」

木田は自転車を引っ張りながらそう言った。

「ラッキー。サンキュ」

本当はどうでも良かったけど、後ろにまたがった。
木田は自転車をぐいぐいこぐ。
沙菜とはスピードが違う。
あっという間に駅に到着した。

「助かった。ありがとな」

後部座席から降りて礼を言う。

「あのさ」

駅へ向かおうとしたら、木田が話しかけてきた。

「俺が三波さんに告白していいのか?」

はぁ?
なに言ってるんだこいつは。

「木田の告白に、なんでオレの許可がいるわけ?好きにすりゃーいいじゃん」

軽く言えただろうか?
動揺を見透かされていないだろうか?
沙菜が好きな男である木田にだけは、オレの気持ちを絶対に知られたくなかった。

「木田はいいやつだし、爽やかな好青年だし、沙菜の好みだと思うぜ」

だから、要らぬことまで付け加えた。

「そうか…」

木田の、何かを決意したような顔。
オレの言葉が、木田の背を押してしまっただろうか。
嫌な予感と、後悔が押し寄せた。

「じゃーな」

それを感づかれないよう、木田に片手を振り、足早に改札口を通った。