Gold Night ―退屈をもてあました男は予言の乙女を欲する―



「好きっつーより、(くに)家のご子息(しそく)を利用したいって腹づもり?バカなその度胸(どきょう)は認めるけどなぁ」


「帝さんを、利用…?」




 まったく ぴんとこなくて首をかしげれば、「ゆいちゃんはかわいいねぇ」と廉さんに頭をなでられる。

 廉さんのそのコメントもよくわからないけど。

 2人に視線をもどすと、ぐうぜん歌姫さんと目が合って、にこりときれいに笑いかけられた。


 歌姫さん、やっぱり美人だなぁ…。




「ま、ゆいちゃんは飯食ってぞんぶんに(きゅう)けいしてきな」


「あ、はい…」




 通路の反対側に歩いていった2人の姿を見ながら、廉さんにうながされて、私はスタッフルームへもどった。

 あんなにきれいな人がアプローチしても無表情なのに、私がなにかしたところで、帝さんの心を落とすことなんてできるのかな…?