Gold Night ―退屈をもてあました男は予言の乙女を欲する―



「あ…」




 場所も相まって、めずらしいものを見た、と目を丸くしていると、歌姫さんがきれいな ほほえみを浮かべて帝さんの腕に触れる。

 それだけじゃなく、上目遣いで、帝さんの腕に抱きつくように そっと手を回す瞬間を見てしまって、きゅっと口を閉じながら廉さんに近づいた。




「れ、廉さん。もしかして歌姫さんも、ドロップハートを…?」




 ひそひそ、と最大限の小声で、くっつくほどに近づいた廉さんに尋ねると、廉さんはおなじく小声で答える。




「いやいや、あれはたんなるアプローチ。前々からあったけど、アーティストとディーラーはあんまり関わらないから知らなかったか」


「え…歌姫さんって、帝さんのことが好きなんですか?」




 2人から目を離して廉さんを見上げると、「いやぁ」と、廉さんは片方の眉を寄せながら半笑いを浮かべた。