「よし…」
お客さまの小さな声を聞きながら、マーカーをレイアウトの上に置いて、赤の6をふくまない場所に賭けられていたチップを回収する。
それから、今回の賭けに勝ったお客さまへ、配当金を頭のなかで計算してチップを用意し、払いもどしていった。
賭け金の処理が終われば、また新たにゲームを始める…ところだけど、テーブルに近づいてきた制服姿の女性を見て、お客さまに一礼する。
交替に来たディーラー仲間さんと入れ替わるようにルーレットのテーブルを離れて、私は愛想よくカジノフロアの出入り口へ向かった。
「あれ、廉さん。おつかれさまです」
「よ~、おつかれ、ゆいちゃん」
玄関ホールを通り抜けて従業員用通路にもどってくると、セキュリティールームのほうから廉さんが歩いてくる。
どうしたんだろう?と首をかしげれば、廉さんはへらりと笑って私の前で足を止めた。



