帝さんに手品をひろうしてしまった翌々日。
月曜日でありつつも祝日の今日は、いつもより心なしかお客さまが多いのだけど。
「Place your bet. どうぞ、お好きな場所にチップを置いてください」
ホイールヘッドをつまんで反時計回りに回してから、テーブルについたお客さまに賭けを始めてもらい、視界のはしで動くワインレッドを見る。
ここではワインレッドのスーツがお決まりの格好である帝さんは、今日も恋とは無縁そうな顔でカジノフロアを歩き回っていた。
ドロップハートを始めてから、帝さんにいつもと変わったことをされるようになった、なんてことはなく。
「Spinning up」
私は白い球を時計回りにルーレットへ投げ入れてから、ふたたび ちらっと遠くにいる帝さんを見る。
せっきょく的に話しかけに行ったり、思いつくかぎりの変わったことをして帝さんの関心を買おうとがんばっているのは、私のほう。



