Gold Night ―退屈をもてあました男は予言の乙女を欲する―





「あははっ、そんなことがあったの」




 落ち着いた濃色(のうしょく)の赤じゅうたんに、金色の装飾(そうしょく)が混じったクリーム色の壁。

 上面が緑色のテーブルと、座ればふかっとする紫紺(しこん)のイスが等間隔(とうかんかく)でならび、一角にはスロットマシンが林立(りんりつ)するここは、カジノGold(ゴールド) Night(ナイト)の店内。

 時計も窓もないせいで時間感覚が(くる)うこの空間で、私たちスタッフはただ今、開店準備中だ。




「笑いごとじゃないですよ、晴琉(はる)くん。おしりを触られたときなんか、ぞわっとしたんですから」


「ごめんごめん。災難(さいなん)だったね、結花(ゆいか)さん」




 白いYシャツに、黒いベストと、同色のスラックスというおなじ制服姿をした、1歳上の後輩にねぎらいの言葉をもらって、私はうなずく。

 各テーブルを回って、白、赤、緑、黒、紫、オレンジ、グレーの7色があるチップを整理し、専用の置き場にセットしながら、彼のその後を思い浮かべた。