右手に持った万年筆をおおうように左手をすべらせて、人差し指と親指で万年筆をつまみ、顔の高さまで持ち上げる。
それから、手を上下にすばやく動かして万年筆の先っぽをゆらすと、指でつまんだ場所の横がぐにゃぐにゃと曲がった。
「ごらんのとおり!万年筆がこんなにやわらかくなりました!」
「…」
「…」
「…」
左手をじゃん、とそえて笑顔で帝さんを見れば、表情が変わる気配のない帝さんに、じぃ、と見つめられて、ちょっとずつ羞恥心が湧き上がってくる。
む、無反応!そうだよね!あの帝さんが手品をひろうしたくらいで私のこと好きになってくれるわけない!
「し…失礼しましたっ!!」
私は耳まで熱くなるのを感じながら、急いで万年筆をデスクの上にもどし、支配人ルームを飛び出した。
いくらなんでも、このやり方は むぼうだった!!



