Gold Night ―退屈をもてあました男は予言の乙女を欲する―

 あいさつしたから帰る?

 いやいや、支配人ルームまで来ておいて、あいさつひとつしたくらいで帰るなんて…っ!

 え、えぇと、変わったこと、変わったこと…。


 廉さんのアドバイスを思い出して、部屋のなかに視線を走らせると、正面にあるデスクに万年筆(まんねんひつ)が置かれているのが見えた。




「あ。帝さん、デスクにある万年筆、お借りしてもいいですか?」


「あぁ」




 帝さんの許可を取って万年筆を取りに行ったあと、デスクの前で横を向いて帝さんと向かい合う。

 そして、思いついたことを元気よく口にした。




「これから、手品をします!」


「…」


「よく見ていてください。かたーい万年筆ですが、こうやって魔法をかけると…」