帝さんにぼそっと命令された運転手さんは、土下座している男性に近づいて、横道へ引っぱっていった。
「ひぃぃっ、すみません!すみません!」と男性からもれる悲鳴は、耳をふさぎたくなるほど悲痛なひびき。
やっぱりちょっとぶっそうな街だなぁ、と思いながら、私はとなりに立つ帝さんの横顔を見上げた。
「ありがとうございます、帝さん」
「いや」
帝さんは私を見ることもなく、肩から手を離す。
やはり気だるさがにじみ出た伏し目がちな横顔が、息を飲むほどきれいだなぁと、私はすこしのあいだ帝さんに見惚れていた。
メニュー