せっかくチケットを買えたのに、手放さなきゃいけないんだ。
博ツキくんのライブ、行きたかったな…。
そんなことを考えていると、じわじわと視界がゆがんでいって、瞳から涙がこぼれた感触がする。
あれ…たしかにショックだけど、そうかんたんに黒街からは出れないってわかってたのに、なんで泣いてるんだろ…?
もしかして久しぶりにお兄ちゃんと話せるかもとか、初めてお父さんと会えるかもとか、ちょっと考えてたせいかな。
仮面の内側に涙がたまっている感触がして、これ以上仮面をぬらさないように、頭からゴムひもを外し、内側をセーラー服のそでで拭いた。
「ごめんなさい、ちょっとぬれちゃいました…」
「…」
仮面を返すと、帝さんは片手で仮面を受け取ってから、止まらない涙を手の甲でぬぐっている私を見る。



