Gold Night ―退屈をもてあました男は予言の乙女を欲する―



 遠くのテーブルから、がやっと歓声(かんせい)が上がるのを耳にしながら、今日の前半の仕事を終えた私は、すれちがうお客さまに会釈(えしゃく)しつつカジノフロアを歩いた。

 通りすがりにブラックジャックのテーブルを見ると、高校生とは思えないほど店内に溶けこんでいる晴琉(はる)くんが、ほほえみながらトランプをくばっている。

 さすがのよゆう。


 さらに店内を視線で1周すれば、カジノフロアのすみにあるバーの横で、真紅(しんく)のドレスを着た女性が歌っているのを見かけた。

 あの人は黒街で一番人気な歌姫さん。

 去年からGold Nightの専属アーティストになって、集客に一役買っている。


 一度生で歌を聴いてみたいんだけど、おなじ場所で はたらいていても、歌姫さんの歌を聴ける機会ってなくて…。

 うしろ髪を引かれる思いで視線を外して、私はカジノフロアから玄関(げんかん)ホールに出た。