Gold Night ―退屈をもてあました男は予言の乙女を欲する―

 食堂とかお風呂場…というかあれは大浴場(だいよくじょう)だけど、そういう部屋は1階にあるから、1階のすみの部屋をもらった私でも快適(かいてき)に生活できてるんだ。

 学校からはちょっとだけ遠いから、毎朝けっこう歩くんだけど。


 前に住んでいた家の10倍は広い玄関に着くと、黒いYシャツに黒いネクタイ、その上、上下黒のスーツに身を包んだ帝さんが階段を下りてきた。

 1人しかくつを()けるスペースがない、なんてことは ないんだけど、帝さんに先をゆずるつもりで足を止める。

 すると、帝さんは ちらりと私を見て口を開いた。




「乗せてやる」


「え?」




 きょとん、とまばたきをくり返せば、帝さんは私の前を横切って、使用人さんが用意したかわぐつを履きながら、もう一度声を出す。