おずおずと顔色をうかがうと、帝さんは、ふい、と顔の向きを戻した。




「…だめだ」




 いつもどおりの()だるげなトーンであっさりことわられて、やっぱりだめかぁ、とため息をこぼしながら、食堂を出る帝さんの背中を見送る。

 帝さんの姿が壁の向こうに消えて、使用人さんの手で扉が閉められると、私はイスに座りなおして おみそ汁のおわんを手に取った。


 ライブに行くためのチケットはある。

 でも…11月までまだ時間があるとは言え、どうやって黒街の外に出ようかなぁ。

 ごく、とおみそ汁を飲みながら、私はぼんやりと思考の海をたゆたった。




 朝食を終えたあと、学校に行くための身支度を済ませた私は、部屋からスクールバッグを持って玄関(げんかん)に向かう。

 ここはもともと帝さんが1人で住んでいたお(うち)で、まさに豪邸(ごうてい)!っていう広い(つく)り。

 2階は帝さんの生活空間で、立ち入りを禁じられている場所もあるんだけど、書斎(しょさい)とかシアタールームには たまに行かせてもらってる。