首のうしろに回された腕。
脈拍の速い、熱い体で抱きついて、初めて結花が口にした言葉。
どくりと心臓が音を立てた、そんな体の変化をもっと味わいたくて、またいちだんと結花をほっする気持ちが強くなった。
遅効性の毒のように、じわじわとしみこんで、俺に退屈以外のものを思い出させる結花の一挙一動を、そばで観察していたい。
結花からの着信履歴をながめて、今回は なにをするのか予想していた俺は、Gold Nightに着いたタイミングでかかってきた電話に、衝撃をあたえられた。
《帝サマ、ゆいちゃんですが、おそらく――西の関所に向かっています》
「…関所?」
ここから出る許可証も、青波優紀の手紙も隠しているはずだが。
許可していても俺の部屋に入ってこない結花が、俺の部屋をあさった?
…いや、どうでもいい。
「西の関所に向かえ。今すぐ」
「かしこまりました」
――不愉快だ。
結花が、俺のもとから逃げるとは…。
ざわつく心に眉根を寄せて、俺はフロントガラスの向こうを見すえた。



