Gold Night ―退屈をもてあました男は予言の乙女を欲する―

 とは言え、この黒街にも法と呼べるものがないわけじゃなくて。

 この街の支配者であり、人の出入りから物の出入りまでなにもかも管理している(くに)家は、なぞの基準で人を(さば)いている。

 私たちがしていいのは、國家が許していることだけ。もし、國家に にらまれるようなことをしたら……とても口にはできないような末路をたどるっていう うわさ。


 黒街に住んでいる人はみんな、國家の人々の顔と名前をしっかり覚えて、万が一にも失礼をはたらかないようにしている。




「よし。今日もがんばろ」




 10分くらい歩いてきて、大きく きらびやかな建物の前に着くと、私は【Casino(カジノ) Gold(ゴールド) Night(ナイト)】と書かれた看板を見上げて、気合を入れた。

 正面入り口……から入るわけには いかないから、今日もわき道を通った先にある裏口を目指してカジノに近づく。