「よそ見をするな」




 それからまた目を伏せて、私にキスをし、私の腰を抱き寄せる。

 え、え、え、と遅い助走から、頭が急速回転し始めて、帝さんと密着したことで伝わる体温に息が詰まりそうになった。

 どっどっどっ、と加速する鼓動につられるように、体も熱くなり始めて、帝さんが角度を変えたことで、ばくっと心臓がはねる。


 そのとき。




 ――テテテンテテテンテテテン


「んっ…!?」




 とつぜん、近くからなぞの音が鳴り出して、びくっと肩がはねた。

 1秒フリーズしたあと、帝さんはそっと離れて、眉根をすこし寄せながら視線を落とす。

 その視線をたどるように、私も下を見て、気づいた。


 その音が、チェッカーをつけている左手首から鳴っていることに。




「…え」




 現状を理解したとき、目の前からため息をつく小さな音が聞こえる。

 ゆっくり視線を上げると、帝さんは私を見つめて、口を開いた。




「――俺の、勝ちだ」