「他の場所へ行け」


「「はっ、はい!!」」




 帝さんを見て固まっていた一般のお客さんは、いきおいよく返事をすると、私たちの横を通ってあっというまに屋上から去ってしまう。

 ちょっと(はだ)ざむい風を()びながら、2人きりになった屋上で、私はおずおずと帝さんを見た。




「えぇと、帝さん…?」


「…もとから、春日野とは親しげだったな」


「え?あ、はい…晴琉くんは気さくに接してくれるので…」




 帝さん、従業員同士の関係もちゃんと見てるんだなぁ…と思いつつ。

 とりあえず振られた話題に答えると、帝さんは手を離して、ゆっくりと私に向きなおる。




「結花が“心”を賭けてゲームをしているのは、俺とだろう」


「へ…?」




 いつもどおりの無表情で、気だるげに言った帝さんは、私のほおに触れて――、唇をうばった。

 どきっと、まず心臓がはね、1秒遅れて、え、と思う。

 顔を離して私を見つめた帝さんは、ささやくように言った。