Gold Night ―退屈をもてあました男は予言の乙女を欲する―



「や、なんでもないですよ?友だちからちょっとびっくりするメッセージが来てて…今アプリ開きます」


「お~」




 とりつくろって笑うと、廉さんもへらりと笑い返してくれた。

 もしチケットが買えたら、そのときにちゃんと考えてみよう。

 そう考えながら、私は10月8日18時、と呪文(じゅもん)のように心のなかでとなえて、SNSのアプリを開く。


 廉さんがそばにきて、手元を見られながら、ときに「ここな」と操作(そうさ)を教えてもらいながら、アカウントを消す一歩手前の場所まできた。

 正直(しょうじき)、さっきの通知のポスト、もっとちゃんと見たい…。

 でも、廉さんに怒られちゃったからなぁぁ…。


 かっとうするあまり、「ぅぅぅ」とうなり声をもらしながら、私は赤文字の[アカウント削除]という言葉をタッチする。

 パスワードの入力を終えて、アプリの画面が初期のものにもどったのを見ると、物悲しい気持ちになった。