Gold Night ―退屈をもてあました男は予言の乙女を欲する―

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――(くに)(みかど)視点――


 ぐったりとした結花の体を抱き上げて、ベッドまで運ぶ。

 青白い顔とは対照的に、口元や服は血で赤く染まっていて、頭がすこし くらっとした。




「…結花」




 ほくろのあるほおに触れると、生きた体温を感じる。

 ――ひさしぶりに、あせりを(いだ)いた。

 “残り”に気づいたタイミングで、結花がさけんで、近づいてきて。


 服のそでに切れ込みが入っているのが、毒のぬられたナイフを体に受けた証拠(しょうこ)だ。




「…」




 どうやら、()せられてきているらしい。

 心を動かしてくれるなら、どんな刺激(しげき)でもいいと思っていたが…。




『ぇへ…しぬ、かと…おも…まし、た…』




 弱々しく笑う結花の顔が浮かんで、目の前の赤い口元を服のそででぬぐった。

 この顔に、血は似合わない。




 ――コンコンコン


「失礼いたします。清掃(せいそう)に参りました」




 いつもどおりのタイミングで来た使用人を部屋に通して、ひとつの命令を下した。




「――結花の部屋の警備(けいび)を、つねに最高レベルに引き上げろ」