「ありがとうございます、晴琉(はる)くん。でも…私、このままじゃ帝さんにまったく近づけない気がします。どきどきしてアプローチどころじゃ…」


「うーん…」




 晴琉くんは考えこむようなそぶりを見せたあと、「結花(ゆいか)さん」と私の名前を呼んで、するりと手をとった。

 へ、と目を丸くすれば、晴琉くんの指が私の指のあいだに入りこんで、きゅっと手をにぎられる。

 それから伏し目気味に私の目を見つめてくる晴琉くんは、いつもの親しみやすい雰囲気(ふんいき)ではなく、大人の色気をまとわせていて。




「は…晴琉、くん…?」



 どぎまぎして名前を呼べば、晴琉くんはやっぱり、いつものやわらかいほほえみじゃなく、妖艶(ようえん)なほほえみを浮かべて私に(こた)えた。

 こ、この晴琉くん、だれぇ…っ!?