へらりとした軽薄(けいはく)な声を聞き流して、読み終えた書類を片付ける。

 必要なものにサインをするため、デスクの上の万年筆(まんねんひつ)に手を伸ばすと、結花の顔が脳裏(のうり)に浮かんだ。

 …もっと近くに来ることを許したら、結花はどんな顔を見せるようになるのか。


 そのことに、すこしだけ興味が湧いた。




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――青波(あおなみ)結花(ゆいか)視点――


 今日も25時まで仕事をして、帝さんと家に帰ってきたあと。

 大浴場にゆっくりと()かり、ほかほかの体をパジャマに包んで、私は自分の部屋へ帰ろうとしていた。


 本当なら、毎日せっきょく的にアプローチするくらいじゃないと、私が帝さんを落とすなんて むりなんだろうけど…。




「結花」


「ひゃいっ!?」