(みかど)サマ、俺です」




 扉をノックした(れん)を部屋に通して、デスクの前にもどった。

 イスに腰かけて、中断した書類の確認を再開する。




「ゆいちゃん、俺の顔も見ずに走っていきましたけど。今日は なにをしてくれたんです?」


「…キスをさせろと」


「…へぇ」




 廉の声がにやついたものに変わった。




「ゆいちゃんはおもしろい子ですよねぇ。多少は退屈しのぎになるんじゃないですか?」


「…」




 たしかに、あの突飛(とっぴ)な行動はすこし気がまぎれるが。




「その顔は多少ならって感じですね。帝サマ、ゆいちゃんともっと近くで生活してみてはいかがです?」


「…家に住ませてるだろう」


「あんなすみの部屋じゃなく。ほら、帝サマのとなりの部屋とか、空いてるじゃないですか」