――(くに)(みかど)視点――




「あ、あ…」




 これ以上はないだろう、というほど顔を赤くして、おそれもなにもない無垢(むく)な目を大きく開いた結花(ゆいか)が、言葉にならない声をもらす。

 後頭部をつかまえたまま、気安く俺に向けられることがないその新鮮(しんせん)な表情をながめていると、正しいキスを教えたばかりの唇がふるえた。




「~~っ、し、失礼しますっ!」




 裏返った声でそう言って、一歩あとずさった結花をそのまま逃がせば、脱兎(だっと)のごとく部屋を飛び出していく。




「…」




 子どもだましの手品に始まり、自分でえらんだという花束を渡してきたり、帰りの車で助手席に隠れておどろかせようとしてきたり。

 ドロップハートの攻略として、外したことばかりしてくる結花が、ようやくストレートな行動に出たかと思えば、自分の失敗に気づかず。