帝さんが私の手を取って、私の人差し指を帝さんの唇に押し当てた。
鼻…?え、私、いきおいあまって鼻にキスしちゃったの!?
初めてだからってはずかしい失敗を!と赤面していると、帝さんの左手が私の後頭部を抱き寄せて、顔の距離をちぢめていく。
わ、わ、とあわてて目をつぶれば、――唇同士が重なったのがわかって、さっきの比じゃないくらい心臓がはげしく動いた。
キスって、ものすごく、どきどきする。
10分くらいはキスをしていたような気持ちで、そっと離れていく感触につられて、おそるおそる目を開けると、帝さんと視線がからんだ。
1秒前までキスをしていたんだと思うと、目の前にある瞳を平常心で見れなくて、完熟トマトになれそうなくらい、顔が真っ赤になったのを自覚する。
「…」
その瞬間、私は信じられないものを目撃した。
ずっと変わらなかったものが、ふっと変化した瞬間。帝さんの表情がゆるんで、すこし口角が上がる。
気だるさのにじんだ そのほほえみは…それはそれは、破壊力のあるお顔だった。



