Gold Night ―退屈をもてあました男は予言の乙女を欲する―

「…わかった」




 帝さんの許可をもらって、しつこいくらい深呼吸をくり返し、脈拍をすこし落ちつかせる。

 完全には遅くならないだろうから、ある程度のところで顔を上げて、デスクに腰かけながら待っている帝さんのもとへ近づいた。


 手を伸ばせば触れられる距離、まちがいなく半径1.5m圏内(けんない)

 いつか好きな人ができて、恋人同士になったらするのかな、なんてふわっと考えていたファーストキスが、こんな形になるなんて思わなかったけど。

 私とちがって、まったく動じてない、無表情の帝さんを見上げ、ごくりとつばを飲む。




「…い、いいですか?」


「あぁ」




 気だるげで、冷たい瞳に見つめ返され、「失礼しますっ!」とことわりを入れながら、帝さんの顔に両手を伸ばしてかかとを上げた。

 触れたら ちゃんと人なみの温かさを感じる帝さんの両ほほに手をそえたまま、目をつぶって顔を寄せる。

 ちゅっ、と口になにかが当たった感触がして、どきっと心臓がはねた。