「じゃあね、結花。バイトがんばれ~」
「ありがと。また明日ね、茜」
とちゅうまで一緒に下校してきた友だちに手を振って、1人、道路を渡る。
どこからか聞こえてくるサイレンの音を聞いて、これは救急車かなぁ、と当たりをつけながら、スクールバッグを肩に背負いなおした。
乾いたガムが張りついたり、ところどころなぞのシミがついているアスファルトに かわぐつが触れて、コツコツと私の足音がひびく。
「おい、どこ見てんだ、このグズ!」
「あ?んだテメェ!」
道の先で男性2人がつかみ合いを始めたのが、いやでも目についた。
こまったなぁ、と思いながら、向かいの歩道に移動して、2人の横を通りすぎる。
美容院の窓ガラスに映った自分と目が合って、すき間ができていたぱっつんの前髪を直した。



