裏SNS " F " - 友か、秘密か -

ーー翌日。



響は一日かけて、
改めて教室を観察した。



興味を持って見渡すと、

教室の人間関係は
思った以上に複雑で、

いくつもの糸がもつれ合っていることがわかる。



響の左隣に座る
榊原 萌子の周囲には、
藤井 舞と立石 葵、宮下 澪が集まり、

スマホを覗き込んでは
小さな笑い声を上げている。



この3人は、
藤井と宮下澪の席近くでも
よく談笑していた。



榊原の視線が時折向かうのは、
教室の右後方——桐島 翔と日下部 律。



ふたりに目立った会話は少ないが、

授業中のグループワークや
休み時間の終わりなど

秘密を共有するような、独特の空気感が漂う。



響の右隣では、
瀬川 琉生と根岸 幸太が
軽口を交わしている。

時折、

百瀬 梨々花がその近くにやってくると、
琉生はすっと席を立ち、

彼女に自分の席を譲っている。



百瀬の席には、
朝比奈 千夏が
笑顔で話しかけに来ることもあり、

その様子を
後ろの席から静かに見つめているのは
——白石 遙華だった。



( ……誰が「 青 」だ? )



それらしい人物はいくつかいた。



榊原、藤井、立石ーー

その周辺は
仲良しグループのようでありながら、

それぞれに個性と距離感がある。



藤井 舞は

常に榊原に寄り添っているようで、
ときどき周囲を観察していて、

何かを秘めているようにも見える。



立石 葵は
柔らかな笑みを崩さず、
静かな存在だが、

人に見せない深い部分があるとしたら、
それを抱え込める器も感じられる。



そして、
瀬川 琉生と桐島 翔ーー。



成績上位の2人の生活ぶりには、
" F " による収入の痕跡がいくつも見える。

高級ブランドの時計、革張りのスマホケース、
高性能イヤホン……。



翔の背後に座る日下部 律も、
寡黙な姿の裏に、
何かを隠しているようだった。



ーー数日後。



未だ返事のない「 青色 」に、
響は再びメッセージを送った。



《 Let’s make a deal 》



しばらくして、スマホが震えた。



《 WHO ARE YOU? 》



送信元は『 F 』。

解析を試みると、
アドレスは「 青色 」と一致している。



ーー F 。



イニシャルで考えれば、藤井 舞。
しかし、それだけではない。

2年F組、アプリの名前、何かの頭文字……
「 F 」という文字には多くの意味が重なる。



《 I’m H. You? 》



自らを「 H 」と曖昧に名乗る。
相手には複数の推測が浮かぶだろう。

花山 響の他にも、
一ノ瀬 悠、白石 遙華、樋口 蓮……
Hが頭につくクラスメイトは何人かいる。