裏SNS " F " - 友か、秘密か -

梅雨がまだ明けていない、7月の前半。

湿気を含んだ空気は、
すでに真夏の気配を孕んでいる。



教室の空気も、
じわりと熱を帯びていた。

月末の期末テストを控えて、
生徒たちの間には
ピリピリとした緊張感が流れている。



だがその緊張感は、
勉強だけによるものではない。



" F " の存在が、日々、
教室の温度を押し上げている。

まるで誰にも見えない火種が、
ひとつ、またひとつと
撒かれているように。



ーーある朝。



いつものように始まった

HRの時間で、
鴨田先生が唐突に

" F " について触れた。



「 えーと、本日正午に、
Fにアップデートが入るそうです。

内容は大きく3つ。
『 匿名解除機能 』と『 ペンネーム機能 』、
そして『 DM機能 』です。

詳細を軽く説明するね 」



「 匿名解除 」という言葉に、
教室がざわめいた。

鴨田先生はそれを意に介さないように、
淡々と続ける。



「 まず、全員からの請求が揃えば、
投稿の匿名を解除できるようになります。

それから投稿ごとに
表示名を設定できるようになるそうです。

例えばペンネームとか、
イニシャルでの投稿が可能。

DM機能というのは、投稿の投稿主宛てに
直接メッセージが送れる機能で、
返信のやりとりも可能とのことです 」



教室が揺れる。
新たな機能追加に、
生徒たちの表情が色めき立つ。



花山 響は
その空気を背中で感じながらも、
静かに胸が高鳴るのを感じていた。



ーー昼休み。



教室のあちこちから、
感動する声が響く。



「 うわ、マジでついてる。開示請求、だって 」

「 ほんとだー、DMっぽいのもある 」

「 開示請求ってSNSとかでもあるやつだよね。
でも全員ってことは、公開されるのかな 」



榊原 萌子が
スマホを覗き込みながら声を漏らし、
藤井 舞と立石 葵が同調する。



「 うへえ、やべえじゃん、琉生くん 」

「まーでもこれ、全員からの請求だろ?
まず通らねえし、現実的じゃねーよ 」



根岸 幸太が笑いまじりに呟くと、
瀬川 琉生はそう返しながらも
どこか冷静な目で画面を見ていた。



響はその盛り上がりを見つめながら、
ただ時が過ぎるのを待っていた。