裏SNS " F " - 友か、秘密か -

――その日の夜。
ファミレスに移動して、舞とふたりで席に座る。

舞の口から飛び出したのは、
やはりあいつの名前だった。



「 さっきの樋口何?マジでウザいんだけど 」

「 それ!
『 俺には関係ない 』みたいな顔してさ 」

「 なんか投稿しよーよ、テキトーに。
虚偽でもどうせ誰かしら信じるでしょ 」

「 ウケる!
樋口のこと、そもそもよく知らないけど 」



萌子はスマホを取り出し
" F " を立ち上げると、投稿画面を開く。



【 投稿主 ◇ 匿名 / TARGET ◇ 樋口 蓮

樋口蓮、生徒情報に裏アクセス?

Point ◇ 110pt 】



曖昧に濁すことで、
逃げ道を残した。

彼と教室の反応を試すための、
ちょっとした火種。



ーー翌朝、
クラスにはざわめきが広がっていた。



「 なぁ琉生、あれ見た?樋口のやつ 」

「 見た見たー。まあ、ガセじゃん?
そんな器用じゃなさそうだし 」

「 いや、分かんねーよ?
あいつ何考えてんのか見えねーし 」



ガセだと分かったような
呆れた声を漏らす者、

新しい噂に盛り上がる生徒──
反応は、それぞれ。



けれど " F " において、真偽は二の次。
話題性こそがすべてだ。



その渦の中でただ一人、
浮いたように立っていたのは、当の本人
ーー樋口だった。



「 大丈夫?あんな投稿、出てたけどさ… 」



一ノ瀬 悠が
そっと声をかけている。

樋口を心配しているような、
柔らかな声色。



けれどその奥には、
どこか出来事を観察するような、

静かな楽しみが
ひそんでいる気がした。



樋口は一瞥するだけで、
短く答える。



「 くだらねえ 」



悠が少し眉をひそめた。



「 でも、無視してたら広まるかもだろ。
そういうの、止めないと 」

「 勝手に言わせとけ。バカは騙されんだろ 」



言い切った樋口は、

そのまま課題を机に広げると、
黙々とペンを走らせる。

スマホを見る素振りすらない。



まるで、すべてが
自分とは無関係だというように。



「 ……つまんな 」



萌子は、その背中を見ながら
小さく吐き出した。