裏SNS " F " - 友か、秘密か -

「でも葵って、現代文けっこう得意だよね?」



萌子が話題を変えて振ると、
澪の後ろでノートを見返していた
立石 葵が顔を上げた。



「 うん、まあまあ。小説とか、好きだから 」



葵は控えめな性格だけれど、
笑うとぱっと花が咲いたような雰囲気になる。

中性的な声も柔らかく、
話していると不思議と空気が和らぐ。



最近、席替えで
舞の近くになったこともあり、
自然と一緒にいることが増えていた。



「 小説かー。最近読む暇なくない?
Fとか見てるだけで一日終わるし 」



舞がそう言って、
スマホをわざとらしく振る。



「 わかるー。通知、止まんないもん 」



葵も小さく笑って乗っかってきた。

澪も口角をわずかに上げたが、
どこかその笑みは形だけで、
本心を読ませない。



( そういうとこ。イラッとする )



萌子は内心で舌打ちした。

静かで控えめなくせに、
どこか警戒しているような目を向けてくる。

その中途半端な距離感が、癪に障った。



そのときだった。



「 またあんたらか。くだらねえな 」



冷たい声が
背後から降ってきた。



振り返ると、
樋口 蓮がこちらを見下ろしている。



背は高いが姿勢は悪く、
いつもどこか投げやりな雰囲気。

クラスにも " F " にも、
興味がないという態度を隠そうともしない。



「 えー、何が?」



萌子がわざと軽く聞き返すと、
樋口は無表情のまま肩をすくめた。



「 見てりゃわかる。
Fの話で盛り上がってるやつの目、浅い。
底が透けてんだよ 」



葵は少し不安そうに目を伏せ、
舞が無言で唇を尖らせる。

澪は、視線を落としたまま、
変わらず沈黙を貫いていた。



萌子は、穏やかな笑顔を作りながらも、
苛立ちがふつふつと湧くのを感じていた。