裏SNS " F " - 友か、秘密か -

その放課後。

鞄を肩にかけ、
昇降口へ向かおうとしたとき、

律が教室の出口で待っていた。



「 翔、少し時間ある?」



翔は頷き、
ふたりはカフェホールへと向かう。



昼休みやテスト期間は
ホールには人が賑わっているが、

テスト期間が終わった
放課後のカフェホールは人もまばら。



ここなら、
クラスメイトと顔を合わせる心配も少ない。



冷たいジュースを持って並んで座ると、
律はスマホを取り出し、
" F " の画面を開いて見せた。



「 これ、見て 」



そこには、タイムラインが表示されていた。
しかし、翔の画面とは違って見える。



「 ……匿名の名前に、色がついてる?」



「 ああ、さっき気づいたんだ。
けどこれについて話してる奴が誰もいない。

とすると、
例えば一度も投稿してない人には
こう見えるのかもしれないと思ってな 」



翔はじっと、
その色分けされた【 匿名 】たちを見つめた。



赤、青、黄――同じ色の投稿主が、
複数の投稿に表示されている。

翔が投稿したものは全て、
深いグリーンで統一されていた。



「 ……これ、
同じ色の投稿は同一人物ってことだよな 」

「 多分 」



翔は息を呑む。



これまで、" F " は、
すべての投稿が
断片的であることが前提だった。



もしこれが本当に、
同じ人物による投稿を表しているなら、

誰が何を投稿しているのかの
手がかりになる。



" F " の世界に、
連続性が生まれ始めている。



「 ……面白いな、それ 」



律はスマホを閉じ、
今度はまっすぐ翔を見た。



「 翔って、Fでどんなこと投稿してんの?」



その問いに、
翔はすぐには答えられなかった。
律の目が、どこか真剣だったからだ。



「……まあ、色々。
暴露っていうよりは、観察って感じが多い。
直接的じゃなくて、斜めから見るような 」



そう返すと、
律は小さく頷いた。



「 へえ、翔っぽいな 」

「 ぽいって、まだ俺のことよく知らないだろ 」

「 でも、話してるとなんとなく分かる。
翔って、細かいところから
全体を掴もうとするタイプだろ 」



その言葉に、
心が少しだけざわついた。



確かに翔は、人間の表面よりも、

些細な仕草や
言葉の選び方といった

" 断片 " から
性格を読み取ろうとする癖がある。

" F " がなかったとしても、
きっと同じように人間を観察していただろう。



「 ……まあ、否定はしない 」



律はふっと口元を緩めた。
カップの中で氷が揺れ、
カランと軽い音を立てる。



「 翔って、Fに向いてると思う 」



律はそれだけ言って、
カップに口をつけた。

翔は何も返さず、
黙ってその言葉を飲み込む。



その時、スマホの通知が鳴った。
ーー " F " だ。



【 投稿主 ◇ 匿名 / TARGET ◇ 大橋 詩帆

数学の女子トップは大橋 詩帆。

ちなみにトップ5は上から
玉置、瀬川、桐島、日下部、花山で全員男子 。

このクラスは、
男子の方が理数系に強いみたい(笑)

Point ◇ 660pt 】



さっそく自由記述を活かした投稿に、
律と顔を見合わせる。

翔の点数を考えるに、
おそらくこれは事実だろう。



律は黙って
スマホの画面を差し出してくる。

投稿主の【 匿名 】が
青色で表示されていた。



タイムラインを見返すと、
青色の【 匿名 】はかなりの投稿を残している。

そのほとんどが
" 幼なじみ " や恋愛など
クラスメイトの人間関係を記したものだった。



( ……この投稿 )



割と早い段階で書き込まれた、
座席が成績順だという書き込みも
同じ青色の【 匿名 】によるものだった。



投稿の口調や
煽るような文句から、

瀬川 琉生による投稿だと
翔は思っていた。



しかし、この人物は、
琉生と梨々花についても投稿している。

全く別の人物が投稿したものか、
あるいはーー



「 自作自演をしてるやつもいそうだな 」



律の一言に、
思わず無言のまま顔を上げる。

沈黙の中で、
何かが通じ合った気がした。