裏SNS " F " - 友か、秘密か -

簡易的なテーブルに向かい合い、

大量のプリントを広げながら
勉強をしていると、

置いてあった梨々花のスマホに通知が届いた。



「 ……見て、これ 」



琉生が覗き込むと、
" F " の画面に新たな投稿が表示されている。



【 投稿主 ◇ 匿名 / TARGET ◇ 百瀬 梨々花

百瀬 梨々花は
他校の男子数人と同時に付き合ってる

Point ◇ 420pt 】



「 はあ?くだらねー 」



思わず口からこぼれる。

梨々花も鼻で笑ったが、
その表情は
どこか引っかかっているようにも見えた。



「 証明、出しとく?」

「……いいよ、なんか、必死みたいで嫌だし 」



そう言って、
梨々花はまたペンを持ち直す。



何でもなさそうな素振りをしているが、

長年一緒にいる琉生には、
さっきまでの軽やかさがなくなったのが

丸わかりだ。



( ……せっかくだし、お節介してやるか )



ーー翌朝。



少し早めに教室へ向かった琉生は、

自分の席に腰を下ろすと、
カバンからスマホを取り出し、

" F " の画面を開いた。



指を滑らせ、
昨日の投稿を表示する。



【 投稿主 ◇ 匿名 / TARGET ◇ 百瀬 梨々花

百瀬 梨々花は
他校の男子数人と同時に付き合ってる

Point ◇ 420pt 】



( ……まじでくだらねぇ。小学生かよ )



ポケットからイヤホンを取り出し、
スマホと接続させると、

画面を切り替えて
" F " の証明機能を開く。



梨々花とのメッセージ履歴には、
彼女に他校の男などいない証拠が
山ほど揃っている。



黙って、
それらを証明として送信した。



送信が完了した瞬間、
数人のスマホから、
同時に " F " の通知音が鳴る。



【 虚偽投稿が
瀬川 琉生 により証明されました。
投稿主(匿名)から420ptを没収 】



教室の空気が、一瞬でざわめきに変わる。
何人かがスマホの画面を見つめ、
顔を見合わせる。


「 ……今の見た?琉生が証明したって 」

「 見た見た。
あの二人、そんなに深い仲だったとは 」



新たな噂話に盛り上がる
女子たちを横目に、
ねぎが近づいてきた。



「 琉生見たぜ〜。やるじゃん、証明 」

「ま、こういうのは俺の得意分野だからな 」



ねぎはにやっと笑う。



「 頭も切れるし、発信力もあるし。
ほんと良い幼馴染みだよな 」



琉生はそれには何も返さず、
肩をすくめた。

教室内の視線がちらちらと
琉生へ、

そしてちょうど登校してきた
梨々花へと向かう。



梨々花は、
教室に入った瞬間に空気を察したようで、

わずかに立ち止まってから、
何事もなかったように席へ向かう。



ーー幼馴染み。



物心がついた頃から
隣にいる梨々花は、

琉生にとって
ストッパーのような存在だ。



気まぐれで人を振り回すくせに、
なぜか
彼のブレーキを握っている。

琉生が軌道を外れずに進めているのは
梨々花のおかげといっても
過言ではない。



琉生はそう思いながら、
またひとつ、
教室の " 空気 " が変わる音を聞いていた。