ある放課後。
プリントを取りに戻った教室で、
しずくがひとり、窓辺に佇んでいた。
光を受けた髪が静かに揺れている。
澪に気づいたしずくは、
ほんのわずかに会釈した。
たったそれだけの仕草に、
胸が痛む。
声をかけようとした。
でも、喉が詰まって言葉にならない。
( しずくは、何も悪くないのに。
私が勝手に、逃げただけなのに )
一度背を向けてしまえば、
扉は静かに閉ざされる。
それは、自分で選んだことだった。
その夜。
" F " に新たな投稿が上がった。
【 投稿主 ◇ 匿名 / TARGET ◇ 南雲 しずく
南雲 しずくは宮下 澪のことが嫌い
Point ◇ 470pt 】
澪は、目を疑った。
( ……誰が、こんなことを?)
しずくが
そんなふうに思っているとは、
到底信じられない。
ーーそう思っているのは澪だけで、
本当に嫌われてしまったのかもしれない。
そうだとしても
反論のしようがないことを、
澪はしずくにしてしまったのだから。
翌朝、澪が登校すると、
しずくは何もなかったかのように
席に着いていた。
誰とも話さず、スマホも見ず、
静かにノートを開いている。
なかなか教室に踏み出せず
ドアの外からしずくを眺めていると、
後ろから萌子が
澪の耳元でささやいた。
「 昨日の投稿、見たよ。エグいね。
しずくちゃん、ああいうの平気なのかな 」
「 ……どうだろう 」
萌子の声は変わらず、やわらかい。
けれど、その語尾には、
いつもほんのわずかな棘が隠れていたる。
その違和感は、
否定のできないものになっていた。
( 萌子は今、
何を思って私たちを見てるんだろう )
いつもの何気ない会話の中に滲む、
クラスメイトを見定めるような目。
" F " に上がる事実か分からない投稿を、
「 ありえる! 」
と笑って済ませる軽やかさ。
その柔らかさの中にある毒に、
澪は少しずつ
侵食されている気分だった。
もしかしたら、
自分も観察されているのかもしれない。
そんな考えがよぎった瞬間――
澪の中に、
しずくの姿が浮かび上がる。
あのとき、
離れてしまったのは。
過去への後悔と、
クラスメイトからの視線。
しずくが傷ついてしまう、
なんて心配しながら
彼女のことを
いちばん傷つけているのはーー。
プリントを取りに戻った教室で、
しずくがひとり、窓辺に佇んでいた。
光を受けた髪が静かに揺れている。
澪に気づいたしずくは、
ほんのわずかに会釈した。
たったそれだけの仕草に、
胸が痛む。
声をかけようとした。
でも、喉が詰まって言葉にならない。
( しずくは、何も悪くないのに。
私が勝手に、逃げただけなのに )
一度背を向けてしまえば、
扉は静かに閉ざされる。
それは、自分で選んだことだった。
その夜。
" F " に新たな投稿が上がった。
【 投稿主 ◇ 匿名 / TARGET ◇ 南雲 しずく
南雲 しずくは宮下 澪のことが嫌い
Point ◇ 470pt 】
澪は、目を疑った。
( ……誰が、こんなことを?)
しずくが
そんなふうに思っているとは、
到底信じられない。
ーーそう思っているのは澪だけで、
本当に嫌われてしまったのかもしれない。
そうだとしても
反論のしようがないことを、
澪はしずくにしてしまったのだから。
翌朝、澪が登校すると、
しずくは何もなかったかのように
席に着いていた。
誰とも話さず、スマホも見ず、
静かにノートを開いている。
なかなか教室に踏み出せず
ドアの外からしずくを眺めていると、
後ろから萌子が
澪の耳元でささやいた。
「 昨日の投稿、見たよ。エグいね。
しずくちゃん、ああいうの平気なのかな 」
「 ……どうだろう 」
萌子の声は変わらず、やわらかい。
けれど、その語尾には、
いつもほんのわずかな棘が隠れていたる。
その違和感は、
否定のできないものになっていた。
( 萌子は今、
何を思って私たちを見てるんだろう )
いつもの何気ない会話の中に滲む、
クラスメイトを見定めるような目。
" F " に上がる事実か分からない投稿を、
「 ありえる! 」
と笑って済ませる軽やかさ。
その柔らかさの中にある毒に、
澪は少しずつ
侵食されている気分だった。
もしかしたら、
自分も観察されているのかもしれない。
そんな考えがよぎった瞬間――
澪の中に、
しずくの姿が浮かび上がる。
あのとき、
離れてしまったのは。
過去への後悔と、
クラスメイトからの視線。
しずくが傷ついてしまう、
なんて心配しながら
彼女のことを
いちばん傷つけているのはーー。

