裏SNS " F " - 友か、秘密か -

そのとき、
教室のドアが大きく開いた。

ガラッという音に、
背筋が震える。



入ってきたのは、
肩までの黒髪をすっきりまとめた
若めの女性教師。



表情は柔らかいけれど、
どこか、芯の強さを感じさせる眼差し。



「 おはようございます。
このクラスの担任になりました、

鴨田 紗英 です。社会を担当します。
よろしくお願いします 」



先生がそう言うと、
一部から拍手が上がり

「 よろしくお願いしまーす 」と
返事をする生徒もいる。



けれど、多くの生徒は
手元のスマホに意識を向けたままだ。



「 ……で、
先ほどインストールされたアプリのことで
混乱している人が多いと思うのだけど 」



鴨田先生は
タブレットを掲げて
いたずらっぽく微笑んだ。



「 これは、
このクラス限定の特別プログラム。

" F " という名前の
社会実験アプリを使って、

あるプロジェクトに
参加してもらいます 」



教室が一気にざわつく。



「 実験……?」

「 え、これ学校の企画なの?」




「 情報教育と社会倫理の教育的試みです。

このクラスの生徒について、
客観的な投稿をすることができますが、
皆さんがどう使うかは自由。

投稿すれば報酬として、
ポイントが得られます。



換金可能で、
そのお金は皆さんのものになります。

情報が虚偽だと証明された場合は
" 返済義務 " が発生し、

期日までに返せなければ
" 執行 " が下されます 」



社会倫理、換金可能。
返済義務、執行。



聞き慣れない言葉に、
空気が重くなる。



「 執行って何ですか?」



ふと声を上げたのは、
教室の前方で

ひときわリラックスした
表情を見せる男子──



つい先ほどまで
萌子たちと雑談に花を咲かせていた
瀬川 琉生 だ。



「 詳細はお伝えできません。
正しく使えば問題ないので、
アプリの規約をよく読んでください 」



軽い口調で話しながら、
鴨田先生は
教卓にタブレットを置いた。



「 それから
アンインストールはできません。

他にも規約に違反すると、
ペナルティが発生する場合もあるので
気をつけてください 」



「 なにそれ……全員強制ってこと?」

「 まじで金もらえるんかな 」

「 絶対なんかあるって 」



教室の空気は、
明らかに変化していた。