代わりに、私に声をかけてきたのは、
榊原 萌子と、藤井 舞だ。
──ある日の放課後。
チャイムが鳴ると同時に、
澪は席を立った。
できるだけ早く
教室を出ようとしたその時、
「 澪ちゃん、一緒に帰らない?」
振り向くと、
萌子が柔らかく笑っていた。
隣には舞もいる。
普段、特別親しくなどなかったはずの2人は、
なぜか自然な距離で澪の隣に立っていた。
「 ……ごめん、今日はちょっと 」
一瞬、言葉が詰まったが、
動揺を悟られないように
表情を整える。
「 そっか、急ぎ?」
「 うん、まあ…… 」
「 じゃあ、途中までだけでも一緒に歩こうよ 」
断れる、わけがなかった。
乗せられるまま、
駅までの道を並んで歩く。
「 数学がむずい 」とか
「 国語の教師が話している時の眉毛が面白い 」
とか、楽しそうに騒ぐ萌子と舞。
ふたりのテンションに
ついていけるはずもなく、
澪の掠れた笑いが、
雑音のように耳に残った。
次の日。
購買でパンを買って、
1人で食べようと教室へ戻る。
「 あ、来た。澪、こっち〜 」
ドアを開けた瞬間、
萌子が待っていたかのように声を上げた。
舞もにこりと笑っている。
「 ……私?」
「 他に誰がいるの。ほら、空いてるよ 」
少しの沈黙のあと、ざわつく教室。
萌子はそれを
まるで気にしないかのように、
「 はやく〜 」と笑う。
( ……何のつもり?)
澪は躊躇った。
クラスメイトの視線が、澪の答えを待っている。
「 ……お邪魔するね 」
「うん。あ、これ食べる?
舞が作ってきたやつなんだけど、
めっちゃうまい 」
「 ちょっと、やめてよ。澪、引かないで〜 」
「 あ、ありがとう。いただくね 」
舞が差し出した卵焼きは、
意外にも
ほんのり甘く、
どこか懐かしい味がした。
ふたりが、
何を考えているのか分からない今、
迂闊なことはできない。
それからも
澪は度々
ふたりの空間に呼ばれ、
一緒にいる機会が増えた。
放課後、
机で英語の予習をしていると、
「 え!ノートきれいすぎる!」
と舞が隣に座り込み、
その流れで英語を教えるようになった。
「 めっちゃわかりやすい!」
「 先生よりすごい!」
そう褒められ、
喜んでもらえるのはのは、
素直に嬉しい。
しずくとは、
本当に話さなくなってしまった。
たまに視線が合っても、
お互い言葉を交わさない。
ある昼休み、
萌子がいつもと変わらない声色で言った。
「 澪、何かあったら、うちらに言ってよ。
うちらといれば、ほら。
なんか書かれることも減ると思うし 」
舞も
「 みんな見てないフリして見てるからね、F 」と同意する。
榊原 萌子と、藤井 舞だ。
──ある日の放課後。
チャイムが鳴ると同時に、
澪は席を立った。
できるだけ早く
教室を出ようとしたその時、
「 澪ちゃん、一緒に帰らない?」
振り向くと、
萌子が柔らかく笑っていた。
隣には舞もいる。
普段、特別親しくなどなかったはずの2人は、
なぜか自然な距離で澪の隣に立っていた。
「 ……ごめん、今日はちょっと 」
一瞬、言葉が詰まったが、
動揺を悟られないように
表情を整える。
「 そっか、急ぎ?」
「 うん、まあ…… 」
「 じゃあ、途中までだけでも一緒に歩こうよ 」
断れる、わけがなかった。
乗せられるまま、
駅までの道を並んで歩く。
「 数学がむずい 」とか
「 国語の教師が話している時の眉毛が面白い 」
とか、楽しそうに騒ぐ萌子と舞。
ふたりのテンションに
ついていけるはずもなく、
澪の掠れた笑いが、
雑音のように耳に残った。
次の日。
購買でパンを買って、
1人で食べようと教室へ戻る。
「 あ、来た。澪、こっち〜 」
ドアを開けた瞬間、
萌子が待っていたかのように声を上げた。
舞もにこりと笑っている。
「 ……私?」
「 他に誰がいるの。ほら、空いてるよ 」
少しの沈黙のあと、ざわつく教室。
萌子はそれを
まるで気にしないかのように、
「 はやく〜 」と笑う。
( ……何のつもり?)
澪は躊躇った。
クラスメイトの視線が、澪の答えを待っている。
「 ……お邪魔するね 」
「うん。あ、これ食べる?
舞が作ってきたやつなんだけど、
めっちゃうまい 」
「 ちょっと、やめてよ。澪、引かないで〜 」
「 あ、ありがとう。いただくね 」
舞が差し出した卵焼きは、
意外にも
ほんのり甘く、
どこか懐かしい味がした。
ふたりが、
何を考えているのか分からない今、
迂闊なことはできない。
それからも
澪は度々
ふたりの空間に呼ばれ、
一緒にいる機会が増えた。
放課後、
机で英語の予習をしていると、
「 え!ノートきれいすぎる!」
と舞が隣に座り込み、
その流れで英語を教えるようになった。
「 めっちゃわかりやすい!」
「 先生よりすごい!」
そう褒められ、
喜んでもらえるのはのは、
素直に嬉しい。
しずくとは、
本当に話さなくなってしまった。
たまに視線が合っても、
お互い言葉を交わさない。
ある昼休み、
萌子がいつもと変わらない声色で言った。
「 澪、何かあったら、うちらに言ってよ。
うちらといれば、ほら。
なんか書かれることも減ると思うし 」
舞も
「 みんな見てないフリして見てるからね、F 」と同意する。

