裏SNS " F " - 友か、秘密か -

その夜、
悠は布団の中でスマホを見つめていた。



【 投稿主 ◇ 匿名 / TARGET ◇ 百瀬 梨々花

百瀬 梨々花は授業中分からないところがあると
朝比奈 千夏 に答えを聞いている

Point ◇ 210pt 】



【 投稿主 ◇ 匿名 / TARGET ◇ 大橋 詩帆

大橋 詩帆は榊原 萌子のことを見下してる

Point ◇ 250pt 】



次々と、
匿名の言葉が更新されていく。

その中に
自分の投稿が埋もれていく様子は、
他人事のように見えた。



( もう一回だけ── )



画面の【 投稿 】ボタンに、
指を伸ばす。



今度のターゲットは、
玉置 賢斗。



今日の昼休み。

彼は購買横の壁にもたれ、
チョココロネとツナマヨパンを

無言で交互にかじっていた。



一見、なんてことない光景。

だが、
玉置は普段、

甘いパンしか食べていないはずだ。



微妙な表情で
ツナマヨパンを食べていた

彼を思い出しながら、
文字を打ち込む。



【 投稿主 ◇ 匿名 / TARGET ◇ 玉置 賢斗

玉置 賢斗は購買の横で、
チョココロネとツナマヨパンを食べていた。

チョコは自分用だが、
ツナはおそらく誰か用。

一緒に食べるタイミングを
考えていたようだ。

Point ◇ 550pt 】



単純な内容。
だが、そこには解釈が混ざっている。



あの場にいた全員が
目撃したかもしれない行動に、

ひとつの意味を与えただけ
──ただそれだけで、誰かを語れてしまう。



数日後。

夕方の光が赤く差し込む
放課後の高校は、

昼間と少し姿が変わる。



部活に励む生徒、
ホールで友達と勉強する生徒、
廊下で談笑する生徒。



悠は
校舎の裏手にある自販機前で立ち止まり、
缶コーヒーを手にしていた。



向かいのベンチに、
立石 葵がいる。



缶のコーンスープを両手で抱える立石は、

スマホを見ず、
音楽も聞かず、

ただ黙って校庭を見ていた。



( ……ああいう時間、
立石はよく一人で過ごしてる )



その姿には、
目立たない静けさがあった。



去年の春、
入学してすぐの自己紹介で、

「 体はまだ男性だけど、
女性として生きたい 」



そう語ったと言われている
立石 葵。



彼が選ぶのが「スープ」なのが、
悠には少し印象に残った。



スマホを取り出し、
文字を打ち込む。



【 投稿主 ◇ 匿名 / TARGET ◇ 立石 葵

立石 葵は放課後、自販機前のベンチで、
冬でもないのにコーンスープを飲んでいた。
1日を終えて、一息ついていたようだ。

Point ◇ 50pt 】



投稿してから、
しまった、と思う。



立石がこちらに気づけば、
投稿したのが悠だと分かってしまう。



それはつまり、悠が
" 投稿をしている側の人間 " だと
知らせてしまうようなものだ。



悠はスマホをポケットに押し込むと、
残りの缶コーヒーを無言で飲み干した。