裏SNS " F " - 友か、秘密か -

悠は静かにスマホを持ち上げ、

これまで一度も
使ったことのなかった

【 投稿 】ボタンに指を置いた。



( ……こんな感じになってるのか )



投稿画面を開くと、
【 TARGET 】欄に
クラスメイトの名前がずらりと並ぶ。



誰かを暴けるようなネタもなく、
昨日の放課後に見かけた

" 彼女 " について、
短い文を綴った。



【 完了 】



投稿は即座に
タイムラインに反映され、
数人のスマホが小さく音を立てる。



【 投稿主 ◇ 匿名 / TARGET ◇ 三枝 理子

三枝 理子は、放課後、
図書室にこもって勉強しているようだ。

Point ◇ 110pt 】



「……お前も、見てんのか 」



低く投げかけられた声に
顔を上げると、

斜め後ろの席にいた
樋口 蓮 が立っていた。



無造作に垂れた髪。細身のシルエット。

どこかいつも眠たげで
気だるい印象の彼だが、

その目だけは鋭い光を宿していた。



「 ……何が?」

「 F。今、操作してたろ 」

「 ああ……いや、見てただけ 」



とっさに口をついたのは、
ーー嘘。

だが、樋口は
小さく鼻を鳴らし、



「 まあ、そうだよな 」と呟くように言って、
教卓に背を預けた。



「 俺は、嫌いだわ。あれ。
結局、どんな内容でも誰かを売るってことだろ。
噂でも、事実でも、なんでも。

他人をネタにするシステムって、
根っこから無理なんだよ 」



その口調には、
鋭いトゲがあった。

何かを強く否定し、
何かに強く傷ついたような声音。



「 でも、止まんないだろ。
もうみんな普通にやってるし 」



悠の淡々とした返しに、
樋口はすぐさま首を振った。



「 だから、無理なんだよ。

自分を守るために
誰かを犠牲にするってさ、

ほんとに自分を守ってることになんのか?」



その言葉に、
反論する気持ちは起きない。

「 そうだな 」とだけ応じて、
会話を終えた。