裏SNS " F " - 友か、秘密か -

「 ねえ、南雲さん。お昼、一緒にいい?」



教室後方のしずくの席の前に立って
そう言ったとき、

教室の空気が
少しだけ波打った気がした。



ざわりとした微かな揺れ。
視線、ささやき、沈黙。



真っ先に反応したのは
教室中央に席を固めるグループ

——榊原 萌子、藤井 舞、
そして立石 葵の3人だった。



「 意外〜 」と
小さな声で萌子がつぶやき、
舞が葵に目配せをする。



澪はそれを
見ていないふりをしていたが、

視界の端では
確かに捉えていた。



しずくは一瞬こちらを見て、
すぐに目をそらした。

でもそのあと、
ほんのわずかにうなずいた。



「 ……うん、いいよ 」



その言葉は、
どこかぎこちなく、

でも確かに
彼女の口から発されたものだった。



以来、澪としずくは
お昼を共に過ごすようになった。



コンビニのパンやスイーツを

半分にちぎって
分けることもあれば、

静かに各自のお弁当をつつく日もある。



会話は多くない。
それでも、
不思議と居心地は悪くなかった。



屋上、カフェホール、
それから校庭のベンチ。

クラスメイトの少ない場所を選んで、
ふたりは昼休みの時間を過ごした。



あたたかい雨の日。

珍しく満席の
カフェホールをあとにし、

空き教室でお弁当を広げる。



「 ……変なの、澪って。」



ふと、
しずくがぽつりとつぶやいた。

小さな声で、
天井を見上げながら。



「 なんで?」

「 別に。
ただ、誰かのそばにいようとする人って、
珍しいなって思って。」



その言葉に、
澪は返事ができなかった。



何か言葉を探そうとするたびに、
自分でも気づかない感情が胸をふさぐ。

自分がしずくのそばにいる理由を、
まだ言葉にできない。




その放課後、
廊下が赤く染まる時間。



教室で誰かが「 あ 」と声をあげた。

澪のスマホにも届いた、
" F " からの通知音。

新しい投稿が上がったらしい。



【 投稿主 ◇ 匿名 / TARGET ◇ 宮下 澪

宮下 澪は南雲 しずくと
小学生時代にいじめが原因で疎遠に。
加害者は 宮下 澪。

Point ◇ 120pt 】



「 うわ、また来た 」

「 え、マジ? 」

「 宮下って
そういうタイプじゃないと思ってたけど…… 」



前列にいる
早乙女 俊、根岸 幸太あたりの男子が

顔を寄せ合いながら、
ヒソヒソ声を交わしている。



言葉が出なかった。
ただ、しずくの反応が気になって
横目で見る。



しずくは微動だにせず、
ただ前を向いていた。

まるで、
何も気にしていない、というように。



「……ごめん。
こんな風に巻き込むつもりじゃなかった 」



そう言った澪に、
しずくはふっと笑った。

ほんの少しだけ、
皮肉の混じった表情だった。



「 澪が謝るの、変じゃない?」

「 でも、あれ……」

「 誰が何を信じるか。結局、それだけだから 」



その言葉に、
胸が締めつけられた。

この子は、
きっと本当に分かっている。



人間がいかに簡単に他人を信じ、
そして信じなくなるかを。