来客室に入ると、
スーツ姿の二人の男性が静かに立ち上がった。
「 鴨田先生、ですね。
私、八雲大学より参りました工藤と申します。
そしてこちらが…… 」
「 日下部です。
同じく、八雲大学で教鞭を取っています 」
一瞬、その名前に引っかかる。
どこかで聞いたような名前だ。
だが二人の姿に覚えはなかった。
年齢は40代後半ほど。
紳士的だが、どこか冷たい目をしている。
「 本日は、" F " プロジェクトについての
ご報告とご挨拶に参りました 」
工藤教授が口を開いた。
そして、日下部教授が続ける。
「 まず初めに、2年F組は " F " の試験において、
十分すぎる成果を上げました。
本日をもってプロジェクトFは終了となります 」
「 ……本日、ですか 」
胸の奥にふわりと、
なにかが浮いて、そして沈んだ。
安堵、でも、それだけではない。
終わったという実感がまだ掴めなかった。
「 そして、推薦枠の決定につきまして。
" F " の使用データをもとに、
私どもで選定させていただきました 」
「 ……成績順、ではないのですか?
紗英が疑問を口にすると、
工藤教授が「 ここからは私が 」と微笑んだ。
「 選定基準としては、成績はもちろんです。
しかし、感情の触れが小さいこと、
過去に大きな問題がないこと、
投稿内容に歪みがないことを優先しました 」
工藤教授はそう言うと、
ファイルから紙を取り出した。
2年F組の生徒たち19名の名前が
無機質に並んでいる。
「 例えば……
瀬川 琉生くんや
大橋 詩帆さんのようなタイプは、
多少の癖はありますが、
自ら未来を切り開いていく強さがある。
花山 響くんも然りです 」
確かに、と紗英は思う。
瀬川 琉生と、大橋 詩帆は常に上位だが
所謂「 いい子 」という枠に
収まるタイプではない。
瀬川 琉生はその突拍子のなさと楽観性で
クラスメイトと分け隔てなく接し、
トップ争いに余裕の表情で座っている。
大橋 詩帆は真面目でまっすぐで、
正義感の強さが行動力に繋がるタイプだ。
感情派のように見えて、彼女はメンタルが強い。
けれどそれは、
担任として毎日向き合っているからこそ
見える側面だと思っていた。
" F " の利用でそこまで見えてしまうのかと
紗英は不思議な気持ちになる。
「 一方で、
南雲さん、宮下さん、一ノ瀬くんなどは……
投稿履歴を見ても、少々複雑な背景がある。
大学側としては、
リスクを避けた選考と考えてください 」
「 ……それはつまり 」
選別、と言いかけた言葉を飲み込む。
工藤と日下部は、それが当然であるかのように、
すべてを評価として語っていた。
やがて二人は名刺と生徒の名簿を残し、
静かに帰っていった。
スーツ姿の二人の男性が静かに立ち上がった。
「 鴨田先生、ですね。
私、八雲大学より参りました工藤と申します。
そしてこちらが…… 」
「 日下部です。
同じく、八雲大学で教鞭を取っています 」
一瞬、その名前に引っかかる。
どこかで聞いたような名前だ。
だが二人の姿に覚えはなかった。
年齢は40代後半ほど。
紳士的だが、どこか冷たい目をしている。
「 本日は、" F " プロジェクトについての
ご報告とご挨拶に参りました 」
工藤教授が口を開いた。
そして、日下部教授が続ける。
「 まず初めに、2年F組は " F " の試験において、
十分すぎる成果を上げました。
本日をもってプロジェクトFは終了となります 」
「 ……本日、ですか 」
胸の奥にふわりと、
なにかが浮いて、そして沈んだ。
安堵、でも、それだけではない。
終わったという実感がまだ掴めなかった。
「 そして、推薦枠の決定につきまして。
" F " の使用データをもとに、
私どもで選定させていただきました 」
「 ……成績順、ではないのですか?
紗英が疑問を口にすると、
工藤教授が「 ここからは私が 」と微笑んだ。
「 選定基準としては、成績はもちろんです。
しかし、感情の触れが小さいこと、
過去に大きな問題がないこと、
投稿内容に歪みがないことを優先しました 」
工藤教授はそう言うと、
ファイルから紙を取り出した。
2年F組の生徒たち19名の名前が
無機質に並んでいる。
「 例えば……
瀬川 琉生くんや
大橋 詩帆さんのようなタイプは、
多少の癖はありますが、
自ら未来を切り開いていく強さがある。
花山 響くんも然りです 」
確かに、と紗英は思う。
瀬川 琉生と、大橋 詩帆は常に上位だが
所謂「 いい子 」という枠に
収まるタイプではない。
瀬川 琉生はその突拍子のなさと楽観性で
クラスメイトと分け隔てなく接し、
トップ争いに余裕の表情で座っている。
大橋 詩帆は真面目でまっすぐで、
正義感の強さが行動力に繋がるタイプだ。
感情派のように見えて、彼女はメンタルが強い。
けれどそれは、
担任として毎日向き合っているからこそ
見える側面だと思っていた。
" F " の利用でそこまで見えてしまうのかと
紗英は不思議な気持ちになる。
「 一方で、
南雲さん、宮下さん、一ノ瀬くんなどは……
投稿履歴を見ても、少々複雑な背景がある。
大学側としては、
リスクを避けた選考と考えてください 」
「 ……それはつまり 」
選別、と言いかけた言葉を飲み込む。
工藤と日下部は、それが当然であるかのように、
すべてを評価として語っていた。
やがて二人は名刺と生徒の名簿を残し、
静かに帰っていった。

