裏SNS " F " - 友か、秘密か -

ふと、資料の束の端に
挟まれていた封筒に気づく。



( ……ああ、これも )



転校届けだ。
三枝 理子の名が書かれている。

事前に母親から連絡をもらっていたが、
数日前に理子は紗英の元を訪れ、
静かに「 転校したいです 」と口にした。

それは相談というより、
決意に近かった。



——変わりたいんです、自分で。



理子はそう言った。
その目に、迷いはなかった。

「 わかりました 」と答えるまで、
紗英は少し考えた。



教師として、それが本当に最善かどうか
ーーけれど理子は " F " のただ中で何かを見て、
自分で道を選んだのだ。

その決意を、尊重しようと思った。



( 三枝さんも、彼女なりに戦っている )



そう思いながら、
そっと書類を資料の一番上に置き直した。
教師として何が正解かは、いまも分からない。

けれど
彼らが自分の意志で選び取った何かがあるなら——
それは、信じたいと思った。



封筒を置き、
八雲大学推薦枠取得者のリストに目をやる。



( ……朝比奈さん、良かった )



真面目で、努力家で、けれど
家庭事情が厳しいことを誰よりも理解していた。

そんな朝比奈 千夏が、八雲大学の推薦を得た。
これで大学への道が現実になる。



百瀬 梨々花、白石 遙華もまた、
推薦リストに名を連ねている。

どちらも素直で、優しい子たちだ。

教師として、
彼女たちが報われるのは本当に嬉しい。



……けれど。
違和感が、静かに胸を打った。



南雲 しずく、宮下 澪。
普段から成績上位にいて、
真面目さもある二人の名前が、そこにない。



( ……なぜ?)



不思議に思いながら
成績表と推薦リストを照らし合わせていると、
背後から声がかかった。



「 鴨田先生、お客様がお見えです。
来客室にいらしています 」

「 ……あ、はい。ありがとうございます 」



資料を胸に抱えて職員室を出る。