裏SNS " F " - 友か、秘密か -

そのとき、教室の後ろで
「 ……何これ 」と聞き慣れた声がした。



大橋 詩帆 が
微妙な表情でスマホを見つめている。

彼女の席は、
1列目のいちばん後ろ。

つまり、
ギリギリ上位、という位置付け。



( あ、気にしてる )



萌子はそう察して、
わざとらしく視線をそらした。



少しして、
詩帆が立ち上がって
こちらに歩いてくる。


萌子の机に
手をついて寄りかかると、

スマホを伏せ、
口を開いた。



「 ……あれ、誰が書いたんだろうね 」

「 ほんとそれ〜 」



舞は頬をかるくつまみながら
共感の声を上げ、

萌子も少し口角を上げながら
それに応じる。



「 まあ、匿名ってだけで
無敵になった気分で書いてる人って、
絶対いるし 」



「 うん……
でもなんか、私のこと言われてるみたい 」



「 え、詩帆って
そんなに後ろ気にするタイプだったんだ 」



「 気にしてるっていうか、このクラス、
変に競わせられてる感じ、あるじゃん。

可視化されてると、
ますます比べられてる感じ 」



詩帆の言葉に、
萌子はふと眉を寄せる。



( あんたが言う?)



そう思いながらも、
言葉にはしない。



詩帆は真面目で
謙虚なタイプに見られがちだけど、

萌子からすれば、
どこか裏表があるように思えてならなかった。



いい子ぶってるけど、
わりとプライド高いじゃん、って。



「 でもまあ、成績順なら仕方ないよね。
だって詩帆って、
結構勉強してるイメージあるし 」



「 うん、まあ、
頑張ってるつもりではあるけど 」



舞が今度は
髪の毛をいじりながらなだめると、
詩帆は照れたように笑う。



2人の会話を聞きながら、
萌子は最も窓際の一番後ろ

――転校してきたばかりの
日下部 律を見つめる。



無言で窓の外を眺めている
彼だけは、

転校時に
テストくらいは受けたのかもしれないが、
まだ評価対象外なのだろう。



次のテスト、

もし彼が
詩帆よりも良い成績を表せば

詩帆は2列目の住人となるのだろうか。



「 でもさ、この投稿、
ある意味正直でよくない?」



詩帆がトイレに向かうと、
再び舞がスマホの画面から投稿を開く。



「 見えない序列っていうか、
誰も言わないけど、実際あるよね。
勉強も、交友関係もさ 」



「 それ、めっちゃ分かる 」



萌子はうなずいた。
舞の " 分かってる感 " が好きだ。



気取ってないし、むしろ
" 世の中ってそういうもん " ってスタンス。



なんだかんだ
去年から一緒にいるのは、

舞のそういうところに、
気が合うからだ。




ふと、翔の背中を見つめる。
3番の席――まさに、最上位の一角。



彼はイヤホンをつけたまま、
スマホをいじっているのが見えた。



( やっぱ、似合うな )



" 上位 " って空気が、
翔には妙にしっくりくる。