裏SNS " F " - 友か、秘密か -

ーー 9年前の、ちょうど秋。
夕方の匂い。倒れた背中。震えた手。

そして、叫んでも届かなかった
「 助けて 」という言葉。



……それでも。

琉生がスマホをこちらに差し出したとき、
私は顔を上げた。

そこに表示されていた言葉は――



【 南雲 雪 は人を殺した。 】



たったそれだけだった。
でも、その短い一文に、全部が詰まっていた。

しずくの過去も、罪も、恐怖も、諦めも――
そして、誰にも言えなかった " 真実 " も。



「 ……うん、それでいい 」



しずくは、小さく笑った。



翌朝、" F " の通知音が教室に響いたとき、
しずくは席に座っていた。

周囲のざわつきが次第に大きくなり、
あちこちで
スマホの画面をのぞき込む気配がする。



「 なにこれ…… ガチじゃん…… 」

「 調べたら出てくる、南雲 雪 」



誰かの言葉が空気を切るように飛んでくる。

私は静かに顔を上げた。
そのとき、教室の隅で
宮下 澪が肩を震わせているのが見えた。



……澪。



澪は、しずくの唯一の " 証人 " だった。
あの9年前の事件を
学校でただひとり " 知っている人 "。

Fが始まった直後、澪は声をかけてきた。
気づけば、私たちはまた
一緒に過ごすようになっていた。



だけど、しずくは――自分で、壊した。
あの投稿以来、二人の距離は開いたままだった。

でも、今。
しずくの心は少しだけ、
軽くなっていることに気づいた。

怖さよりも、
静けさの方が勝っていた。